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東京地方裁判所 昭和53年(合わ)79号 判決

主文

被告人を懲役六年に処する。

未決勾留日数中一八〇日を本刑に算入する。

押収してある鋏一丁(昭和五三年押第六〇七号の一)を没収する。

訴訟費用中証人松下育長、同宿理嘉彦に支給した分は、被告人の負担とする。

理由

一認定した事実

(犯行に至る経緯)

被告人は、台湾で出生した中国人であるが、昭和四九年九月ごろ、台北市内のダンスホールで働いていた際に、客として遊びに来た中島紀昭(昭和一五年八月二三日生。当時台湾で歌手をしていたもの。以下、中島という。)と知り合い、同人に好意を抱くとともに、経済的に困つていた同人に同情して同人を援助し、その後しばらくして台北市内の被告人のアパートで同棲生活に入り、翌五〇年一月同人と婚姻したが、同人が帰国を望んだため、その意思に従い、同年二月に来日した。以後被告人は、東京都目黒区大橋一丁目八番一二号所在の北村ハイツ三〇三号室に中島と同居し、当初同人とともに付近の泰信ホテルで働いたが、被告人は、間もなく都内港区六本木にある中華料理店に、さらに昭和五二年六月からは都内中央区の中華料理店「新橋亭」築地支店に順次働き先を移し、新橋亭では土曜、休日を除いて午後五時ごろから同一〇時ごろまでウエイトレスとして勤務し、月収二〇万円を得ていた。

中島は、台港にいた間は被告人にやさしく親切であつたが、来日後は、態度が一変して被告人に対し冷淡になり、被告人は、中島のほか頼る者もない日本にあつて寂寥に堪え難いこともしばしばであつたが、こうした状態について不平を言えば、中島からかえつて暴力を振るわれるため、ひとり懊悩を重ねていたところ、中島は、昭和五二年九月ごろ、前記泰信ホテルをやめ、ブラジルのサンパウロ市に本社があるシエルマール旅行社に被告人の反対を押し切つて入社し、被告人を日本に残したまま約一か月間、さらに同年一二月から約二か月間にわたりブラジルに滞在し、その間にブラジルの女性二名と次々に情交関係を結び、被告人に秘して後の一名と同棲に近い生活を営むようになつていたが、このような事情を知らない被告人は、中島が帰国する日を待ちわびていたところ、同人は昭和五三年二月一一日一旦帰国した。

被告人は、中島が、久しぶりに帰国したにもかかわらず、孤独に堪え難い思いを抱いていた被告人に対し、ほとんど思いやりを示そうとしないことにいたく失望したが、さらに同人のスーツケースの中から、ブラジル女性の恋文やその写真を発見し、これにつき中島に問いただしたところ、同人から、「男は遊ぶのが当然だ。」などと言われるのみで、それ以上相手にされなかつたため、中島がブラジルの女性に心を移してしまつたのではないかとの強い不安を抱くに至つた。同月一六日朝になつて、被告人は、中島が出発の際持参した夏服を持ち帰つていないことに気づいて、中島が間もなくブラジルに戻るつもりで、これを右の女性のもとに預けて来たのに違いないと思い、被告人との結婚生活が破綻してしまうのではないかと感じて、一層やりきれない気持に陥つて行つた。

被告人は、同日、いつものように夕方からの勤めに出て、夜一一時ごろ帰宅したところ、中島は同夜三名の友人を呼んで麻雀をしており、翌一七日午前二時ごろになつて、友人らは帰つたが、その後中島に食事をとらせ、台所で後片付けをしている際、被告人は、やりきれない気持から平素飲むことのないウイスキーをコツプ半分位を一気に飲み干した後、しばらくして同日午前三時ごろ、奥六畳間のベツトに横臥している中島の傍らに行き、同人に対し、「子供を産んで落ちつきたい。」とか、「今の仕事をやめて商売でも始めたらどうか。」などと語りかけたが聞き入れられず、またブラジルの女性のことについて問いただしたところ、かえつて中島から離婚を求められ、これに対し「別れないで欲しい。ブラジルに行くなら自分もついて行く。」などと懇願するうちに口論となり、中島から頭髪を引つ張られ、顔面を殴られ、ベツドの脇の小型書棚を倒されるなどの暴行を受け、その際書棚が被告人の額に当つたので、被告人は同室の電灯を消し、豆球がついた状態にして、洗面所に行つたが、額付近にこぶができているのを見ているうちに感情が激昂してくるのを押えることができなかつた。

(罪となるべき事実)

このようにして、被告人は、同日午前三時半ごろ、台所にあつたブランデーの空びん(丸型)を右手に持つて奥六畳間に戻り、右側を下にして横臥している中島の頭部を腹立ちまぎれに二回程殴打したところ、不意をつかれた同人は、ブランデーびんを持つ被告人の手を振り払うとともに、被告人を強く突き飛ばし、そのため被告人はベツドの反対側に位置する鏡台付近に尻もちをつくような形で倒れたが、中島は、さらにベツドから起き上り、大声で、「精神病だ。医者に見てもらえ。」などと怒鳴りながら、被告人に近づき、倒れている被告人の頸部を左手でつかみ圧迫を加えるなどの反撃行為に及んだが、被告人は、中島からこのような反撃を受け、手で頸部を圧迫されるや、恐怖、狼狽のあまりこのままでは首を絞められて殺されてしまうものと誤想し、たまたま近くにあつた裁縫用の洋鋏一丁(全長約24.3センチメートル。昭和五三年押第六〇七号の一)に右手が届いたため、これを用いて自己の生命に対する侵害を防衛することもやむを得ないものと判断し、とつさにその鋏を逆手に持ち、同人を死に至らせるかも知れないが、そうなつてもやむを得ないと決意し、同人の上体左側部分を力まかせに突き刺し、鋏を取り上げようとして必死に抵抗する同人に対し、さらに少なくとも数回、上体を力まかせに突き刺したが、その際、同人と激しく揉み合ううちに、やがて被告人は、激昂、恐怖、狼狽及びこれまでひたすら堪え忍んで来たことによる鬱積した感情が堰を切つたように迸り出たこと等により精神的に強度に興奮して情動性朦朧状態に陥るとともに、中島を殺害する意思を抱くに至り、前記刺突行為により床に倒れた同人に対し、前記鋏でその頭部、顔面、頸部、背部、臀部等を滅多突きにし、あるいは刺し、さらには同人の陰茎を切断するなどし、結局、以上の行為により、同人に、肝臓、脾臓、腎臓、肺臓の損傷を伴う全身合計約一五〇箇所に及ぶ頭部、顔面、頸部、胸部、背部、腰部、臀部等の刺切創及び陰茎切断の各傷害を負わせ、同傷害により間もなく同所において同人を失血死させて殺害したものであるが、被告人の以上の行為は、自己の生命に対する急迫、不正の侵害があるものと誤想して、自己の生命を防衛するためにしたもので、かつ、防衛の程度を超えたものである。

二証拠の目標〈略〉

三法令の適用

法令に照らすと、被告人の判示所為は刑法一九九条に該当するので、所定刑中有期懲役刑を選択し、さらに誤想過剰防衛行為であるから、判示のような被告人が犯行に及んだ経緯、犯行当時のその精神状態等の情状にかんがみ、同法三六条二項、六八条三号により刑を減軽し、その刑期の範囲内において被告人を懲役六年に処し、同法二一条により未決勾留日数中一八〇日を本刑に算入し、押収してある鋏一丁(昭和五三年押第六〇七号の一)は判示殺人の犯行の用に供した物で犯人以外の者に属しないから、同法一九条一項二号、二項によりこれを没収し、刑事訴訟法一八一条一項本文により訴訟費用中証人松下育良、同宿理嘉彦に支給した分を被告人に負担させることにする。

なお、前記認定のとおり、被告人は、当初の被告人の防衛行為により床に倒れ、無抵抗な状態となつた被害者に対し、確定的に殺意を抱き鋏で多数回にわたりその身体を突き刺す等の行為に及んでいるところ、この段階においては、被告人が急迫不正の侵害と誤想した被害者の攻撃はすでに存在しないから、被告人のこの段階における行為そのものは誤想過剰防衛に当らないといわなければならない。しかし、被告人のこの段階における行為は、それ以前の防衛行為に引き続いた、余勢に駆られた一連の行為であつて(殊に本件においては、情動性朦朧状態という特異な精神状態が継続する中で後段の行為に発展したものである。)、このような場合には、行為を前後二分し、二個の殺人行為があるとしたうえ、前者のみを誤想過剰防衛行為と見ることはもとより、また、行為全体を一個の殺人行為と見ながら結局誤想過剰防衛行為に当らないとして刑法三六条二項の適用の余地を否定することも、いずれも正当ではなく、行為全体を一個の殺人行為と見たうえ、誤想過剰防衛行為を理由に刑法三六条二項の適用を認め、情状により刑を減軽し得るものと解釈するのが正当である(なお、誤想過剰防衛につき刑法三六条二項の適用があることは、最高裁昭和四一年七月七日第二小法廷決定、刑集二〇巻六号五五四頁の判示するところである。)。

四弁護人の主張に対する判断  その一(正当防衛等の主張について)

弁護人は、被告人の犯行のうち当初被害者中島の上半身を数回刺した行為は正当防衛に当り、かりにそうでないとしても誤想防衛に当るものであり、さらにそれ以後の行為については期待可能性がないものであるから、全体として被告人は無罪である旨主張し、その理由として、被告人はまずブランデーの空びんで中島の頭部を二回殴打する暴行を加えているから、それに対し同人が被告人を突き飛ばしたところまでは被告人の自招行為として中島の行為に対する正当防衛とはなし得ないが、さらに中島が被告人の頸部を絞めつけるような行為に出た点は行過ぎであるから、被告人に対する急迫、不正の侵害があり、被告人はこれに対して自己の生命を防衛するためにやむを得ず中島の上半身を数回刺したもので、その限りにおいては正当防衛であり、かりにそうでないとしても被告人は中島の右行為により殺されるものと誤想し、かつ、その誤想が当時の客観的状況に照らしやむを得ないものであつて相当性のあるものであるから、誤想防衛として故意を阻却するものである。また、被告人が右数回の刺傷行為の後になした行為は、被告人が中島から首を絞められる等の攻撃を受けたため、恐怖、興奮、狼狽の程度が極めて著しい状態においてしたもので、期待可能性がない旨を述べている。

そこでまず、正当防衛及び誤想防衛の主張について検討すると、被告人は、前記認定のように、薄暗い部屋で横臥している中島の頭部を突如として同人の不意を衝いてかなりの重量があるブランデーの空びんで殴打したものであるから、このような場合、同人が激昂して相当激烈な反撃行為に出たとしても、被告人としてはみずからそのような行為を招いたものというべきであり、その限りにおいては防衛行為は許されないというべきであるところ、中島の、前記認定のような頸部を圧迫する反撃行為は、被告人の中島に対する右のような暴行の状況から見て通常予想し得る程度を超えないものであり、かつ、被告人の暴行に比して社会通念上著しく程度を超えた行為でもなかつたと認められるから、このような中島の行為に対して防衛行為をすることは、同人の手を振りほどくため暴れるなどの軽度なそれは別として、本来許されるものではなかつたといわなければならない。しかし、被告人がみずから招いたとはいえ、首を絞められて生命を奪われることを甘受しなければならないものではないから、そのような侵害行為に対し相当な方法で防衛行為に及ぶことはやむを得ないものとして許されると解されるところ、被告人が前記認定のような反撃を受け頸部を片手で掴まれ圧迫を受けたのに対し、当時被告人がかなりの興奮状態にあつて恐怖、狼狽等のあまりこのままでは殺されてしまうと誤想したとしても、これを不合理とすることはできないものであり(証拠上被告人のこの旨の弁解を覆すことができない。)、すなわち、被告人は、正当防衛をなし得る事情がなかつたにもかかわらず、そのような事情があるものと誤想したものとして、その行為は、いわゆる誤想防衛の場合に該当するものである。

しかし、防衛行為の程度を考察すると、中島はあくまで素手でしかも片手で被告人の首を圧迫して来たにとどまり、時間的にもそのような行為が開始されたばかりであり、首を圧迫している中島の手をはずすには、手足を用い、体を強くゆすつて抵抗する等他に採るべき方法があつたと認められ、それにもかかわらず、手にした鋏で直ちに相手の体幹部を突き刺すというような、致命的な結果を発生させる危険性のある行為に出ることは、すでに防衛の程度を超えたものといわざるを得ず、その後の、中島が兇器を奪い取ろうとするのに対し、取られまいとして揉み合いを続けながら、同人が床上に倒れ無抵抗な状態になるまでの間に、さらに同人の身体を刺した行為もまた、防衛の程度を超えたものといわなければならない(なお、被告人が床上に倒れ無抵抗な状態にある中島に対し多数回にわたりその身体を突き刺す等の攻撃を加えた行為そのものは、もはや誤想過剰防衛に当らないが、それより前の行為と一体として刑法三六条二項を適用し得ることは、前述したとおりである。)。

つぎに、犯行当時の被告人の恐怖、興奮、狼狽等の精神状態から期待可能性がなかつた旨の主張について考えるのに、犯行当時の被告人の精神状態については、後に判示するとおりであつて、これによれば、当時被告人は犯行途中から心神耗弱の状態に陥つたものの、さらに進んで、犯行を中止することを期待し得ないような事情まではいまだ存在しなかつたと認められるのである。

これを要するに、弁護人の主張のうち正当防衛及び期待可能性がない旨の主張は理由がなく、誤想防衛の主張は誤想過剰防衛が成立する限度で理由があるものである。

五弁護人の主張に対する判断  その二(心神耗弱の主張について)

さらに、弁護人は、被告人は、本件犯行当時、少なくとも被告人が当初の数回の刺傷行為をした後の段階においては、飲酒の影響もあり興奮のあまり情動性朦朧状態に陥り、心神耗弱の状態にあつたものであるから、刑を減軽されるべきである旨主張するので検討する。

鑑定人中田修作成の精神状況鑑定書によれば、同鑑定人は、被告人は、中島に鋏を奪われないように同人と揉み合つていたが、そのうちに情動性朦朧状態、すなわち、強度の精神的興奮の結果意識が混濁した状態に陥り、心神耗弱の状態にあつた旨鑑定している(なお、同鑑定人の当公判廷における証言参照)。

ところで、前記(証拠の標目欄記載)の証拠を総合すると、

(一)  被告人は、夫の中島に従つてわが国に来たが、信頼していた同人から次第に冷たく扱われるに至り、殊に同人の長期間の外国出張中はひとり取り残され、孤独な状態に置かれ、我慢と懊悩を重ね、精神的に不安定な状態が相当期間継続していたばかりでなく、中島がブラジルの女性と極めて親密な関係にあることを知つてからは精神的に一層不安定な状態に陥つていたこと、また、犯行前に、飲みつけないウイスキーをコツプ半分ほど一気に飲んでいたことなどの事情があり、被告人の性格的要因と相俟つて、激しい興奮状態に陥り易い原因となる状況が存在すること、

(二)  被告人は本件犯行の途中以降の明瞭な記憶を欠く疑いがあること、

(三)  さらに、異常性が最も顕著な点であるが、前記認定のとおり、被告人は被害者をまさに前後の見境もなく滅多突きし、残された刺創痕は実に約一五〇箇所の多きに達し、しかも陰茎の切断というような行為に及んでおり、行為自体極めて異常性の高いものであること(このような行為は、被告人の真面目な性格及び日常の行動に照らし極めて了解が困難である。)、

などの事実が認められる。そして、このような事実に徴して、また、前記鑑定書の鑑定理由を検討するとき、前記鑑定意見は相当として採用すべきものと判断されるのである。

すなわち、被告人は、前記認定のとおり本件犯行途中において情動性朦朧状態に陥つた時より後の段階においては、是非善悪を弁別する能力及びその弁別に従つて行動する能力が著しく減弱した状態、すなわち心神耗弱の状態にあつたものである。

しかし、被告人は本件犯行の意を決し、これに着手した時においてはいまだ心神耗弱の状態になく、犯行途中からこの状態に陥つたものであるが、このように少なくとも犯行の実行を開始した時に責任能力に欠けるところがない以上、その実行行為の途中において心神耗弱の状態に陥つたとしても、刑法三九条二項を適用すべきものではないと解するのが正当である。

以上の理由により、弁護人の主張は、結局理由がない。

六刑の量定の理由

被告人の本件犯行は、前記認定のとおり、それに至つたについては種々な経緯があるとはいえ、その夫を、鋭利な洋裁用の鋏を振るつて約一五〇箇所にもわたつて滅多突きにし、あるいは刺し、はては陰茎を切断し、失血死させて殺害したものであつて、残酷かつ悽惨といわざるを得ず、一般社会に及ぼした衝撃も大きかつたものである。犯行自体は、甚だ重大であるといわなければならない。また、後述するとおり、被害者にも強く責められる点があつたとはいえ、本件当夜、もしも被告人がブランデーの空びんで被害者の頭部を殴打するような行為に出ていなかつたならば、本件のような惨事にまで発展することはなかつだものと考えられ、その限りでは被告人に本件の発端を作つた責任がないとはいえないであろう。

しかし、ひるがえつて考察するのに、

(一)  被告人は、台湾でダンサーをして相当高額の収入を得ていたもので、同地の人と結婚しておれば、まず通常の家庭生活を送ることができたであろうが、図らずも知り合つた中島と恋愛して結婚し、同人を信頼し、幸福な生活を夢見て、いわば身も心も同人に捧げて日本に来たのに、同人は、日本では心変りして次第に被告人に冷たくなり、殊にブラジルに愛人を作り、翻意を求める被告人の願いを聞き入れず、被告人をいたく苦悩させて、前途を悲観するところまで追い込んだものであり、また本件犯行当夜の、翻心を求める被告人の願望に対し同人の執つた態度も甚だ誠意を欠くものであつて、これを要するに、被害者にも強く責められるべきところであること、

(二)  被告人が鋭利な鋏で被害者の身体を刺突する等の兇行に及んだのも、被害者から反撃された際、たまたま近くにあつた鋏に右手が届いたことに起因し、興奮のあまりそれがさらに発展して多数回の刺突等の行為に至つたものであつて、その意味で、右のような悽惨な兇行の原因は偶発的であると認められること、

(三)  被告人の本件犯行は、前述のような誤想過剰防衛行為であること、

(四)  被告人は、前述のとおり、本件犯行の途中以後において心神耗弱の状態にあつたこと、

(五)  被告人は、犯行後いわば我に還つた時、非を悔いガス管を開いて自殺を図つたこと(室内の換気扇が廻つていたこと等から死に至らなかつた。)、

(六)  被告人は、初犯であつて、平素の生活態度は甚だ真面目であり、何ら問題はなかつたこと、

(七)  不十分であるが、被害者の遺族に見舞金を支払い、謝罪の意志を表明していること、

などの事情が認められるのである。

被告人の本件犯行は、前述のようにまことに重大であり、また、被告人は、前述の意味において本件惨事に至る発端を作つた点は責められなければならないのであるが、右のような諸事情を斟酌して、被告人を懲役六年に処するのを相当と判断した次第である。〈以下、省略〉

(大久保太郎 小出錞一 小川正持)

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